介護施設の食費・居住費はなぜ高い?負担限度額認定証と2026年8月の変更点を整理
介護施設の費用を調べていると、「介護保険が使えるのに、なぜこんなに高いのだろう」と感じる方は少なくありません。
介護保険サービス費については、所得に応じて1割・2割・3割の自己負担があります。
しかし、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、ショートステイなどを利用する場合、費用は介護サービス費だけではありません。
毎日の生活に必要な「食費」と「居住費」が別にかかります。
この食費・居住費は、施設に入所している限り継続的に発生するため、月単位で見ると大きな負担になります。
そこで重要になるのが、介護保険負担限度額認定証です。
所得や預貯金などの条件に該当する方は、この認定証によって、介護保険施設やショートステイの食費・居住費を軽減できる場合があります。
制度の詳しい内容、4段階の認定区分、2025年・2026年の変更点については、こちらの記事で詳しく整理しています。
介護施設の費用は「介護サービス費」だけではない
介護施設の費用を考えるとき、まず目に入りやすいのは介護保険サービス費の自己負担です。
要介護度や施設の種類によって介護サービス費は変わりますが、利用者は原則としてその1割から3割を負担します。
ただし、施設で暮らすためには、それ以外にも費用がかかります。
たとえば、食費、居住費、日常生活費、医療費、理美容代、衣類や消耗品などです。
特に、食費と居住費は毎日発生します。
そのため、1日あたりでは数百円、千円単位の差に見えても、1か月、1年で見ると家計への影響は大きくなります。
「介護保険施設だから安いはず」と考えていると、実際の見積もりを見たときに驚くことがあります。
施設の種類によっても費用や制度の対象が変わるため、まずは施設の違いを理解しておくことも大切です。
負担限度額認定証とは何か
介護保険負担限度額認定証とは、所得や資産が一定以下の方について、介護保険施設やショートステイを利用する際の食費・居住費の負担を軽減する制度です。
制度上は「特定入所者介護サービス費」または「補足給付」と呼ばれます。
対象となる主なサービスは、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、地域密着型介護老人福祉施設、短期入所生活介護、短期入所療養介護などです。
一方で、訪問介護、デイサービス、訪問看護、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などは、原則としてこの制度の対象外です。
つまり、同じ「高齢者向けの住まい」でも、制度が使える施設と使えない住まいがあります。
ここは、施設選びの段階でかなり重要です。
対象になるかどうかは、所得だけでは決まらない
負担限度額認定証は、単に「収入が少ないから使える」という制度ではありません。
判定では、本人の所得だけでなく、世帯の住民税課税状況、配偶者の所得や資産、預貯金なども確認されます。
特に重要なのが、住民税非課税世帯に該当するかどうかです。
住民税非課税世帯については、こちらで詳しく解説しています。
また、介護費用の話では「世帯分離をした方がいいのか」という相談もよくあります。
世帯分離によって世帯の課税状況が変わり、負担限度額認定を受けやすくなる場合はあります。
しかし、世帯分離をすれば必ず負担が下がるわけではありません。
配偶者については、住民票上の世帯が別であっても、所得や資産の確認対象になる場合があります。
さらに、介護保険料、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、各種給付などに影響することもあります。
世帯分離は、介護費用だけでなく生活全体への影響を見ながら判断する必要があります。
世帯分離についてはこちらで整理しています。
2026年8月から食費・居住費の一部が変わる
負担限度額認定証に関する制度は、近年少しずつ見直されています。
2024年8月には、居住費の基準費用額や負担限度額が見直されました。
2025年8月には、第2段階と第3段階①を分ける所得基準の見直しや、老健・介護医療院等の多床室に関する扱いの変更が行われました。
さらに、2026年8月からは、食費の基準費用額が引き上げられます。
これに伴い、負担限度額認定を受けている方のうち、第3段階①・第3段階②に該当する方については、食費の負担限度額が一部引き上げられます。
また、第3段階②の方については、居住費も一部で1日あたり100円引き上げられます。
「1日あたり数十円、100円程度」と聞くと小さく感じるかもしれません。
しかし、施設生活は毎日続きます。
月にすると数千円、年にすると数万円の差になることもあります。
介護施設の費用は、こうした小さな制度変更の積み重ねで変わっていきます。
食費や居住費の基準となる「基準費用額」についてはこちらで詳しく解説しています。
2026年の介護報酬改定全体については、こちらの記事でまとめています。
申請しなければ使えない制度である
負担限度額認定証は、条件に該当していても、基本的には市区町村への申請が必要です。
自動的に適用されるわけではありません。
申請時には、本人や配偶者の預貯金通帳、有価証券、投資信託、借入金の状況など、資産を確認できる書類を求められることがあります。
施設入所やショートステイの利用が決まりそうな段階で、市区町村の介護保険担当窓口、担当ケアマネジャー、施設の相談員などに早めに確認しておくと安心です。
対象になるか分からない。
預貯金はいくらまでならよいのか。
世帯分離をした方がよいのか。
親の年金額だとどの段階に該当するのか。
こうした疑問は、家族だけで判断するより、制度を扱っている窓口に確認しながら進めた方が確実です。
介護費用は複数の制度を組み合わせて考える
介護施設の費用を考えるときは、負担限度額認定証だけを見ればよいわけではありません。
介護保険の自己負担割合、高額介護サービス費、高額医療・高額介護合算制度、医療保険の高額療養費制度など、複数の制度が関係します。
まずは、介護保険の自己負担割合を確認します。
次に、施設利用時の食費・居住費について、負担限度額認定証の対象になるかを確認します。
さらに、月々の介護サービス費の自己負担が高額になった場合には、高額介護サービス費の対象になるかも確認します。
介護費用は、ひとつの制度だけで全体像を判断しにくいものです。
だからこそ、「何が介護保険の対象で、何が対象外なのか」「どの制度がどの費用に関係するのか」を整理しておくことが大切です。
おわりに
介護施設の費用は、「介護保険が使えるかどうか」だけでは判断できません。
介護サービス費、食費、居住費、日常生活費、医療費などが重なって、実際の月額費用が決まります。
その中で、介護保険負担限度額認定証は、低所得の方にとって重要な費用軽減制度です。
一方で、2026年8月からは一部で食費・居住費の負担が増える予定です。
施設入所やショートステイを検討している場合は、早めに制度を確認しておくことが大切です。
負担限度額認定証の対象者、申請方法、4段階の認定区分、2025年・2026年の変更点については、こちらの記事で詳しくまとめています。





